Top > 住まいのコラム一覧 > 求められる災害対策 暮らしと防災 家を建てる 成功の鍵 VOL.10
一級建築士が解説!
上記の通り、耐震性能を優先する相談者は少なく、今まで石川県の家づくりは地震対策をはじめとした自然災害への対策が軽視されてきました。しかし令和6年能登半島地震を機に、防災視点での家づくりの相談が増えてきており、多くの人の価値観が変わったと考えられます。今一度、暮らしと防災のことについて考え直してみませんか?
暮らしと防災
段階別・災害種別の防災対策
大きな災害が起きると避難行動や防災備蓄についての報道が多くなります。もちろん大事な防災対策ですが、災害直後の対策でしかありません。災害対策基本法で定められている防災の定義は「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ること」とされており、災害直後だけではなく平常時や復旧時の対策も必要とされています。ここが家づくりで考えるべきポイントです。これから家を建てる方は災害に強い土地探しと住宅性能、既に家を建てた方は災害リスク確認と耐震補強について検討すべきでしょう。 災害と一括りに言っても地震、火災、水害、土砂災害、風害など様々。発生要因から対策までどれも異なるため、災害の種類によって土地選びで対策できること、住宅性能で対策できることに分かれます。時に土地に絡むことは建ててからでは対策の余地が無いので、これから選ぶ方はコストとリスクを天秤にかけて考えてほしいです。既に家を建てた方は、対策が難しいため、有事に適切な避難行動ができるよう備えてましょう。生活性能については、発生して半壊や全壊になるよちも、新築時やリフォーム時にコストをかけて補強しておく方が生涯コストは抑えられるかもしれません。何もおきないのが、最善ですが、もしも起きた時にというのが、防災対策なので、、保険のようなものとイメージして対策するかどうかを考えてみるのがいいでしょう。それでは、災害別に起こり得るリスクと対策を知り、これからの暮らしの安全性について一度考えてみましょう。
1.住宅性能で対策できること
地震は建物へ損傷を与え、最悪の場合は倒壊する恐れがあります。新築住宅の場合は耐震等級2や3の取得、既存住宅の場合は耐震補強をすることで対策できます。どちらも専門的な計算を用いて補強していくため、構造計算費用や補強費用でコストが高くなるでしょう。ただし既存住宅への耐震補強は、自治体による補助金が利用できる場合があるので活用するのがおすすめです。
火災は、「出火しないこと」、「出火しても近隣に延焼しないこと」、「近隣の火災から延焼しないこと」が求められます。出火させないためには火器の仕様を控えましょう。オール電化は安全性が高いですが、漏電による火災リスクもあるため、清掃や適切な電気計画が必要です。延焼させないために、省令準耐火構造を採用する方法があります。採用すると火災保険料が安くなるメリットもありおすすめです。
台風をはじめとした風害によって、建物に損傷を与える場合があります。対策は建物側ででき、耐風圧を少なくするため四角いシンプルな形状にしたり、平屋にして表面積を少なくすることが有効です。また飛来物で窓ガラスが割れる場合もあるため、窓にシャッターを設けるといいでしょう。台風の少ない北陸ではあまり見られませんが、台風の多い九州地方ではよく見る対策です。
2.土地選びで対策できること
液状化現象で、地震の振動で地中の土砂が液体のようになり、水と一緒に地表へ噴き出す現象です。地下水を多く含んだ砂地や埋立地で発生することが多く、建物の隆起や陥没を誘発します。被害を受けた建物を修繕するには、建物ごと持ち上げる必要があるため多額の修繕費がかかるでしょう。対策は発生確率の低い土地を選定するしかないので、ハザードマップ等から地形分類を確認しましょう。
水害は通常の水位よりも高い位置に水面がきて、家屋に被害を与えるのが特徴です。水害時の想定水位はハザードマップで確認できます。被害は床上浸水と床下浸水で異なり、都市の成り立ちから浸水0mのエリアは少なく、発生しても床下浸水で済むようなエリア(浸水深さが0.5m未満)まで許容範囲内として選ぶのがいいでしょう。また木造住宅は津波の水圧に耐えられないため、土地選びでしか回避できません。
地震や大雨を機に発生するがけ崩れや土石流、地すべり等による土砂災害は、破壊力が高く一瞬にして大きな被害を出します。土地の危険度はハザードマップや自治体のがけ地条例で確認できますが、平地を選ぶのが最善策です。どうしても傾斜地を選ぶ場合は、そこが切土か盛土かを調べてみましょう。一般的に、傾斜地を切って平地にした切土はリスクが低く、人工的に土を盛って造成した盛土はリスクが高いと言われています。
解説:一級建築士 鶴見哲也
1986年石川県かほく市出身。新潟大学大学院修了後、金沢市の設計事務所や住宅会社で8年半建築設計業務に従事。2019年(株)ミライエ・カンパニーに転職し、メディアの立場から家づくりをわかりやすく、失敗しないようサポート。イエタッタカウンターでは勉強会や個別予約で直接相談可能