Top > 住まいのコラム一覧 > 一級建築士が教える!成功する家づくりの秘密:知っておきたい必勝法
家づくりは、多くの人にとって一生に一度の大きなプロジェクトです。何から始めたら良いか分からず、不安に感じる方も多いでしょう。しかし、成功する家づくりには「必勝法」があります。その秘密は、「勉強・情報収集を行い、目的を定めてから動く」こと、そしてそのための「準備」に尽きると言われています。
具体的には、以下の3つのポイントを抑えることが重要です。
1.家づくりは、長期間の暮らしを決めるものであり、難しくて当然だと理解する。
2.家だけではなく、「暮らし全体」の一部として家を捉える。
3.準備なしに住宅会社を訪問しない。自分たちの明確な「価値観」や「物差し」を持ってから動き出す。
このステップを踏むことで、住宅会社のペースに惑わされず、スムーズに家づくりを進めることができるのです。つまり、成功の鍵は、家を建てること自体ではなく、「暮らしづくり」として家づくりを捉え、事前の準備を徹底することにあると言えるでしょう。
「家づくりを何から始めたらいいんですか?」これは、家づくりを考え始めた多くの方が抱く共通の疑問です。土地探しから?お金のこと?それとも、まずは住宅展示場を回ってみるべき?やるべきことが山積みのように感じられ、一体どこから手をつければ良いのか分からず、立ち止まってしまう方も少なくありません。
なぜ、家づくりにおいて事前の準備、特に「暮らし全体」を考え、「物差し」を持つことがそれほどまでに重要なのでしょうか。
まず、家づくりは非常に難易度が高いものだと認識する必要があります。例えば、30代で家を建てた場合、平均寿命まで考えると50年近く同じ家に住むことになります。これは、賃貸アパートを1〜2ヶ月かけて内見して決める労力 の、単純計算で25倍、30倍にもなる難しさがあると言えます。一度で完璧な家が見つからなくても当然であり、焦らず中長期的な視点で臨む必要があります。
そして何より大切なのが、家を「暮らし全体の一部」として捉えることです。家づくりの目的は、単に「箱」としての家を手に入れることではなく、その家で送る「どのような暮らしをしたいか」を叶えることにあるはずです。家の予算が高くなれば、当然住宅ローンの返済額も増え、教育費、車の購入・維持費、趣味や旅行 といった他の生活費を圧迫する可能性があります。将来の家族構成、働き方、収入の変化 など、家族全体の将来を見据え、お金のバランスをどう取るかを考えることが非常に重要です。理想の家ありきではなく、「どういうライフスタイル」「どういう暮らし」をしたいかによって、建売住宅、中古住宅、注文住宅など、自分たちにとって適切な家が決まってくるのです。
このように、暮らし全体を考え、自分たちの譲れない価値観や優先順位を明確にすること、これこそが「自分たちの物差しを作る」ということです。家づくりは一種の「買い物」です。結婚式の服を選ぶように、まず目的と予算を決め、それから「買い物先」(住宅会社)に行くという手順がスムーズな家づくりにつながります。何百社とある住宅会社の中から自分たちに合った会社を見極めるためには、この正確な「物差し」が必要不可欠なのです。
推奨される具体的な家づくりの手順は以下の通りです。
1.価値観を整理する: 「なぜ家を建てるのか」「どのような暮らしをしたいのか」を家族で話し合い、明確にする。現在のライフステージだけでなく、大人だけになる期間が圧倒的に長いことを考慮に入れ、誰のために、何にお金をかけるか考える。
2.資金計画を行う: 価値観に基づき、暮らし全体で見た実現可能な予算を設定する。
3.住宅会社を選ぶ: 作成した「物差し」を基に、自分たちに合った会社を探す。(土地がない場合)住宅会社と一緒に土地を探す: 資金計画と価値観に合った土地を専門家と一緒に見つける。
この順番で進めることが、後悔しない家づくりへの道なのです。
私自身の事例をお話しさせてください。私の家は、実は中古住宅を購入してリノベーションしたものです。建築士としては、作品としての理想的な家を望む気持ちも正直ありました。しかし、妻が自営業のカメラマンであり、その働き方を優先した結果、希望通りの新築は難しかったのです。写真スタジオが必要で、希望のエリアの土地は高価だったことも理由です。
そこで、暮らし全体を考えた結果、中古住宅をリノベーションするという選択に至りました。これは、家単体の理想を追求するよりも、家族が仕事を含めてどのように豊かに暮らせるかを優先した結果です。結果として、生活全体でのストレスが軽減され、家庭内の会話も明るくなりました。建築士としての納得とは少し違う形でしたが、「暮らしとしては家づくり成功だった」と感じています。
この事例は、家づくりを「家」というハード面だけでなく、「暮らし」というソフト面から考えることの重要性を示しています。
多くの人が家づくりで後悔したり、時間がかかってしまったりするのは、まさにこの最初の「勉強や情報収集、資金計画をして、自分たちの物差しを作る」という準備を怠って動き出してしまうからです。準備不足のまま住宅会社を回っても、自分たちの基準がないため、多くの情報に翻弄され、何を基準に選べば良いか分からなくなってしまうのです。
だからこそ、最初に「自分たちの物差し」をしっかりと作ることが、スムーズで後悔のない家づくりにつながるのです。
家づくりは、難しく長期的なプロジェクトです。しかし、「暮らし全体」を考え、自分たちの価値観という「物差し」を事前にしっかりと準備することで、住宅会社選びも、資金計画も、土地探しも、迷わずにスムーズに進めることができます。まずは、ご家族で「どんな暮らしがしたいか」を話し合うことから始めてみませんか。