Top > 住まいのコラム一覧 > 間取りは足し算ではなく割り算 家を建てる 成功の鍵 VOL.11
一級建築士が解説!
住宅のコストは面積の影響が最も大きい。土地が定まらなければ間取りを描くことはできない。また土地を住宅ローンで購入する場合 は、家づくりの総予算が決まっていることになる。つまり、そこから足し算式であれもこれも欲しいと間取りを考えても、面積が大きくなっ て予算オーバーになる危険性がある。このような失敗を防ぐためには、予算から家の面積を逆算して、必要な部屋数で割り算しないと 予算内での家づくりはできません。
間取りの考え方 すべては間取りで決まる
土地が決まり、住宅会社が決まると本格的に検討していくのが間取りです。暮らしやすさもコストも、全て間取りで決まると言っても過言ではありません。前述の通り、家づくり全体のコストから 建築可能な面積は逆算できます。その面 積の中で最善の間取りを作るために必要なことは、自分たち基準を具体的に持つことです。人それぞれ暮らしの経験や抱いて いるイメ—ジが異なり、同じリビングという 部屋名でも異なる考え方である場合が多々あります。床に座るのか、ソフアーに座るのか。テレビを見るのか、ゲームもするのか。ライフスタイルの違いによって間取りは全く異なるものになるでしょう。だから具体的な過ごし方、使い方、置くものの量等を伝えることが重要です。友人に聞いたりインタ—ネット等で調べたりすることも大切ですが、その情報を鵜呑みにしてはいけません。必ず自分たち基準というフィルターを通して、参考程度で捉えてください。また自分たち基準と同じぐらい大事なのが、敷地の周辺環境を考慮することです。隣接している敷地の状況、建物の形や高さ、窓の位置、方位等によって間取りに大きな影響を及ぼすことがあります。例えば方位的には南側が日当たりの良い場所と言われていますが、高い建物が建っていると影になって日が入りません。南側道路で採光条件は良いけど、道路から丸見えだとか、隣の家とお見合いするような窓の配 置だとカーテンは閉めっぱなしになって窓の意味がなくなるでしょう。敷地選びの時にも何が可能で、何が難しいのかイメージできると理想的です。自分たちでイメージが及ばない場合、住宅会社の設計担当に、理想の暮らしができる家が建つ敷地かどうか相談するのもいいでしょう。それでは自分たち基準と敷地環境を踏まえた上で、暮らしやすい間取りを考えるポイントを解説します。どんなところから考えたらいいのかという手掛かりだと思って参考にしてみてください。
暮らしやすい間取りづくりの6つのポイント
Point:1 家事動線は家事別に考える
家事と言っても多種多様ありますが、実は異なる家事を同時に行うことはありません。つまり家事動線は家事別で関連する一連の流れとして整理するのが正解です。料理なら買し幽から調理してごみ捨てまで、洗濯なら脱いで洗って干して片付けるまで。料理と洗濯の工程が交わることは少ないので、そこは別々で整理していきましょう。回遊動線があるからスムーズだと 安易に誤解しないでください。
Point:2 広さは面積で考えない
広いLDKにしたいという要望は非常に多いです。でも建築空間における広さは必ずしも面積と一致するわけではありません。空間のプロポーション、窓の配置による視線の抜け、吹抜けによるギャップづくり等、広さは空間体験 で感じられます。これらができていないと、面積が広いのになぜか窮屈に感じる場合もあります。面積が大きくなるとコストが高くなるため、面積は小さく空間体験は広く感じられる間取りを目指しましょう。
Point:3 収納は多くても使いにくい
「片付けを楽にしたいから収納はたっぷり欲しい」という要望は多いです。でも片付けは物に住所を与えることです。住所不定のものは仮置きを続けてしまい、結果的に家が散らかります。つまり目的のない収納が沢山あっても片付けは楽になりません。必要なところに必要な分だけあるのが最適な収納計画です。過剰な収納は面積増加によるコストアップにもなるため、適材適所で考えましょう。
Point:4 カーテン不要の窓が心地よい
窓は、「光・風・風景」のどれかを取り込む装置です。何1つ取り込めない窓は、壁よりも断熱性能が低いので弱点でしかありません。「光・風・風景」を効果的に取り込むには、カーテンがしまっていない状態が理想的です。効果的な窓が設けられたら、空間体験として広さも手に入ります。家の外から中が丸見えだとプライベートが確保できません。窓の位置、大きさをよく考えて理想的な窓にしましょう。
Point:5 ドアはないほど使いやすい
ドアの役割を考えてみましょう。空間の体積を小さくして空調効率を良くする、音や臭いが伝わらないようにする、視線を遮ってプライバシーを確保する。これらの役割がないドアは、移動の度に開閉が必要な邪魔なもの。意味のないドアは暮らしてから開けっ放しなんてこともあり得ます。ドアを設置しなくても後 付けのカーテン等で代用できる場合もあるので、役割のあるドアか考えてみて ください。
Point:6 部屋名ではなく使い方で考える
間取りを考える時、住宅会社に部屋名で伝えてはいけません。なぜなら欲しいのは部屋ではなく、そこでできる行動や過ごし方だからです。広い土間玄 関の部屋名は玄関ですが、スノーボードのワックスをかけている時間は趣味室です。効率が良く、合理的な間取りづくりには1つの部屋に多様な用途 を持たせるのがポイント。使い方や過ごし方を具体的に伝えて、より良い間取りを目指しましょう。
解説:一級建築士 鶴見哲也
1986年石川県かほく市出身。新潟大学大学院修了後、金沢市の設計事務所や住宅会社で8年半建築設計業務に従事。2019年(株)ミライエ・カンパニーに転職し、メディアの立場から家づくりをわかりやすく、失敗しないようサポート。イエタッタカウンターでは勉強会や個別予約で直接相談可能